サンタケロース

 薬屋のお馴染みのケロくん(本名は知らない)はとっても可愛く、頭部はないから見る度に目ん玉を撫でてやりたくなるが、社へ向かう道中の薬局にいるケロくんは今、無理矢理にサンタクロースにされていて、それがまた可愛い。前述の通り頭部はないので、例のサンタクロロースの頭巾はキョロ目の上に被されていて、また、前を通りがてらちょっとやそっと眼を遣るだけでは分からない仕組みによって顎に白ヒゲが付いている。例の上着はと言えば、極限までに短い腕の先の手を出すべく、人間だったら袖無しになる位までの腕まくりをされ、もはや機能を失った有り余った裾が足下に集約されている。ケロくんは確か、直立不動だったと思うのだけれど、布が被せられているとどうしたことか、胡座をかいているように見えるから不思議だ。ところで私は、なんであれ、可愛いものの前を通り過ぎるときうんうん頷きながら「可愛いのね」と囁いてしまう。だから、ほぼ毎日このケロくんを見ては「可愛いのね」と云っていたのだが先日、雨の日にこのドラッグストアの前を通りかかったら、居ない。「えっえ、そんな訳ないじゃん」と軽く動揺しながら探してみると、縦長の店の左奥にちゃんと居た。安心した。