福島第一で、起きたこと、起きていると考えられること、最悪の場合。

情報が発表されていないのか、本当に混乱しすぎて現場でも何が何だか分からないのか(混乱しているなら混乱していると発表するべきだと思うが‥‥)、現場からの情報伝達がうまくいっていないのか。いずれにせよ、かなり少ない情報や外から確認できることを見た専門家たちが「考え得ること」という前提で発言している。だから、あくまでも「理論的に考えられる予想」であって「事実」ではないことは納得して欲しい。

地震の発生と共に、第一の1,2,3号機は、燃料棒の間に制御棒がつっこまれ、核分裂が止まる。(止まらなかったのがチェルノブイリ。しかも、格納容器がなかった。)核分裂が止まっても原子炉圧力容器の中は260℃から270℃、70気圧、またウランが分裂して出来た核分裂生成物たち(ヨード、セシウム、クリプトンなど、ウランの重さの半分の元素たち)が分裂を続け、その際に熱を発する(崩壊熱)。この熱を除去しないと、原子炉の中の気温・気圧がどんどん上がっていってしまう。設計圧力(運転圧力約70気圧×1.25倍=約87気圧)を超えると原子炉が破損する可能性があるので、自動だったり手動だったりする安全弁から蒸気がふくようになっている(水沸騰するとピーッとなるヤカンと同じ原理。スリーマイルでは周辺住民も「ピーッ」という音を聞いたという)。安全弁が吹き続けたり、開けたときに「開固着現象(開いたまま閉まらなくなる現象)」が起きたり、また配管の破損などで冷却水が漏れたりすると、燃料棒を覆っている水もどんどん減っていってしまうので、燃料棒が顔を出し、燃料が溶け出す。最悪の場合、水が完全になくなり、溶けて底に溜まった燃料が原子炉を溶かし(メルトダウン)、地面に染み渡っていき、そのエリアは核汚染される。そうならないためにも、とにかく何が何でも冷やさなくてはならない。また、原子炉が破損(メルトダウン)した場合、放射性物質が飛び散らないように格納容器も水で満たしておく必要がある。ホウ素を入れるのは、核反応の媒介となる中性子を取るため。核反応は止まっているはずだから本来ならいらないんだろうけれど、こういうのを「念のため」と言うのだろう。

バックアップシステムがなかったという訳ではない。が、第一に、地震津波の規模が設計想定を完全に超えた。津波は最大7メートルとされていたが、14メートルに達した。なので、2台用意してあったディーゼルジェネレーターは海水を被り動かなくなったのだろう。海側に電源が置いてあるのも、また二つとも同じ系統の電源だったのも問題。同じ条件のところに同じ装置があれば、同じ負荷を受ける(これは勿論、同じ仕組みの原発が並んでいる現状に対してもいえる)。更に外部からの電気を送ってくれる変電所(恐らく地震で壊れたから、送電がない)も一カ所だったと思われる。蓄電池があったものの、始めの7,8時間で尽き果てた。第二に、このように電源がなくなることは全く想定されていなかった。電源がなければ「自動」で動くはずのものは動かないし、計器類も機能しないからどこがどうなってるかも把握できない。

水素爆発は電源がなかったことで起きた、と言えるかも知れない。ジルコニウムでできた燃料を入れる容器「被覆管」が高温の水蒸気と反応を起こし、水素が出てジルコニウム酸化物になって、もろくなってしまう(そうならないために今はステンレススティールで作られる)。そのため、この管がなかにある核分裂生成物で破裂(ブレーク)した。こうして発生した原子炉圧力容器の中の水素が、格納容器に漏れ出した。そして更に、格納容器に溜まった圧力を抜く穴から水素が建屋に逃げていった。本来なら格納容器内の水素は酸化させ水にするのだが(サプレッションプール)、電源がないのでこのための装置が作動しなかった。また、建屋は普段、「負圧(エアロックともいうようだ。外の1気圧より少し低くなっていて、外から入るのは許しても、内側からは出さない)」になっていて、圧力が上がると自動で開く窓(ブロワー、ブローウィンドウ)がある、これも電源がなくて動かなかった。結果、建屋内に水素がたまりそれが酸素と反応して爆発したと思われる。

とにかく、国も東電も、何を把握していて何を把握できていないのか、はっきりと具体的に情報を発表してほしい。あと、あまり言われてないようだが、この原発を作った東芝というメーカーも積極的に協力できるのではないだろうか。ホウ素と海水ががちゃんと原子炉に入り、漏れたりしていなければメルトダウンは避けられ、また、格納庫が水で満たされていればメルトダウンが起きても放射性物質が飛散するのを防げるそうだ。とはいえ、原子炉の中はもの凄い圧力だから、その圧力を押し返して海水を入れなくてはならない。だから、ただ単に「海水を注入している」ではなく、海水を原子炉や格納庫に注入するにはどれほどの電気が必要で、果たして電力が間に合っているのか。海水を入れても入れてもどこかしらから漏れていってしまう、だだ漏れ状態にはなってはいないのか。1号機に問題が起きた直後、アメリカからの支援を何故か断った「実績」もある。何故そんなことになったのかの追求はひとまず置いておいて、なりふり構わずとにかく冷やし、放射性物質の飛散や海への流出だけは絶対に防がねばならない、というのが現状のようだ。