前回の『衝撃、あるいは闖入物としての芸術』の訂正・補足。

 

デュシャン展のグッズ売り場を少し見たのだが、デュシャンのサインのステッカーがあった。「これを貼りさえすれば、あなたの周りの物は何でもデュシャンの作品になります」と言うことだろう。」


 と書いたのだけれど、厳密には、売られていたステッカーは「泉」(本当は「噴水」だという主張を朝日新聞で読んだことがある)に書かれた、「R・MUTT 1917」というサインもの。便器会社のもじりだとか*1
 ついでに、あの便器、写真で見ても実物で見ても、いま一つ据え付けられている様子が想像できなかったのだが、あれは立ちション用の便器で、正面の穴が水道管に繋がるようだ。つまりあの穴を上にした状態で壁に設置される。たまたま昨夜、『プライベート・ベンジャミン』という映画を見ていたら、米軍の宿舎のトイレに、正にあの便器があった。主人公がトイレ掃除をさせられているシーンだったのだが、目はもうすっかり、男性用便器に釘付けになってしまった。


 それから、文中で触れた3本の定規だが、作者・作品名は相変わらず不明なのだが、どうやらこれは、「三つの基準停止装置」というデュシャンの作品*2に触発された作品のようだ。


 それにしても、多少、作品の解説が欲しかった。「知らざる者、行かざるべし」ということなのだろうか。番号が表示された作品がいくつかあったので、音声解説はあったのかもしれない。だが音声案内を勧めてくれる人はいなかった。また、各展示スペースのコーナー(角)には、監視員が配置されていて、鑑賞者が作品に触れぬよう、目を光らせていた。びっくりしたのだが、ガラスケースに入った作品をよく見ようと顔を近付けただけで怒らてしまった。正直いって、非常にウザい。そんな脆弱なガラスケースならば、「近づくな」との警告でも貼ればいいのに。何のためのガラスケースなんだよ! 作品が掛けられた壁の手前の床にも、黒いビニールテープが貼ってあって、無言に「この線から先へは入るな」と主張していた。嫌なもんだ。私は勿論、作品には最大限の気を配ったが、そんなテープは無視した。鑑賞者全員が「危険分子」という前提があるようで本当に不快だった。「よく見ちゃいけない」だなんて、一体どういう美術館なんだ? もしかして、作品を破壊、ないしは窃盗されたことが今までにあったのだろうか?

*1:「ARTCONTEMPORARY IN JAPAN」というサイトの「M.Duchamp1」に便器についての解説がある。http://www.linkclub.or.jp/~kawasenb/02artist/02art_index.htm

*2:「ARTCONTEMPORARY IN JAPAN 」の、「M.Duchamp2」にこの作品についての説明がある。http://www.linkclub.or.jp/~kawasenb/02artist/02art_index.htm