初・変異型クロイツフェルト・ヤコブ病

 BSEが原因とされる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患者が日本国内で初めてでた。海外、特に一番変異型が多いイギリスに行ったことのある人なんて、日本には腐る程いるわけだから、「ついに出たか」という感じだ。けど、「1989年頃、英国に1カ月の渡航歴」があるっていうのが泣けます。1989年(平成元年)“頃”ってなんでしょう。私は平成2年の夏、2週間イギリスにいました。何喰ってたかなんて覚えちゃいない。献血拒否されますね、私。
 クロイツフェルト・ヤコブ病というのは、異常プリオンによって引き起こされる病気で、確か、100万人に一人の確率で発病する。だけど、潜伏期間が長いから、年寄に多く見られる病気。しばしば、その症状故に単なる痴呆だと思われて死んでいった人もいるはずだとか。ところが、イギリスで若いヤコブ病患者が出始めた。これはおかしいぞ、と。それで調べていったら、同じく異常プリオンの病気であるBSEが人間にも感染するのではないかと疑われるようになった。
 牛のBSEが確認されたのは、1986年。だけど、「種の壁」があるから人間には関係ないとされていた。が、先ほどにも述べたように、若い人が次々と発病するもんだから、牛との関連が疑われ、牛のBSE確認から10年経った1996年にやっと、BSEが人間にも感染するということが分かった。
 牛から牛だと、潜伏期間は5年。牛から人間だと10年〜20年。牛から人間の感染が、どのくらいの量の牛を喰うことによって起こるのか不明だが、人間同士だと血液を介して感染することが分かっている。また、プリオンが蓄積される部位は分かっている。牛の場合、異常プリオンの90%が脳と脊髄に蓄積されていて、残りは目や腸にあるとされる。だから、危ない部位を取り除けば大丈夫だということになっている。
 だが例えばイギリスでは、脊髄についた肉を削り落としてハンバーガーに入れていたらしい。削る時にプリオンも一緒に肉に入り混んでいる可能性は勿論ある。それだけじゃない。なんと、ハンバーガーのつなぎに、牛の脳を使っていたらしいのだ。更には、食べなくても感染する可能性があったりもする。
 BSEそして変異型ヤコブ病については、2002年2月号『現代思想 (特集 先端医療 資源化する人体)』(青土社)に載っている澤野雅樹「肉のフロー  狂牛病と資本主義」*1がスゴイ。単なるネタとして読んでも楽しいのだが、『アンチ・オイディプス』辺りが理解できている人には「ネタが楽しい」では済まされない程面白いのだと思う。